顔認証は現代社会で主にセキュリティ強化と手続きの簡略化に用いられていることが多いように感じます。例えば、空港ではFace Expressと呼ばれる顔認証システムを使用した搭乗手続きが導入されています。これはチェックイン時にパスポートと乗客の顔を照合し、情報を登録することで以降の手続きでのパスポート、搭乗券の提示が不要になるというものです。手続きごとの待ち時間を解消するのに一役買うだけではなく、危険人物の識別を行えるためテロ対策としても有効なシステムとなっています。
一方で、日常に根付いた技術であるとは言えないのも現状です。活用方法がまだまだ発展途上であるからこそ、多くの人々が「興味はあるもののビジネスシーンにどう生かすか」について、頭を悩ませているのだろうと思います。
HOUSEIの顔認証システムであるWelcomIDは、主に生活関連サービス業における無人店舗運営に役立てられています。そこには、今まで遠い存在であった顔認証を身近なものに感じてほしいという思いも込められています。
では、実際にどのような活用事例があるのでしょうか。今回のコラムではそれらを紹介していくとともに、顔認証が今後いかにして生活に根差していくか考えていきたいと思います。
最初に紹介する事例が、プライベートサウナです。「密を避けたい」、「プライベートな空間で楽しみたい」といったお客様の思いを実現するために無人店舗ソリューションが導入されています。顔認証端末はエントランスと各部屋のドアに設置され、入退室に際してお客様が感じる煩わしさを最小限にする仕組みとなっています。これはパンデミック下のような非接触・非対面が推奨された状況において、衛生面から見ても効果的な取り組みであり、参考にすべきビジネスモデルと言えます。
ある店舗では顔認証によるスムーズな入退室が好評を集め、サウナルームの平均稼働率が9割を超えたほか、直近ではリピーターのお客様が半数ほどを占めるなど確実な集客力アップにつながっているそうです。
次に紹介する事例がシミュレーションゴルフです。ゴルフというスポーツの性質上どうしても荷物が多くなりがちですが、顔認証の導入によりスマホや会員証を提示する必要がなく、両手がふさがっている状態でもスムーズに入室が可能です。
また、予約開始時間の30分前から予約終了時刻まで何度も入館可能であるため、忘れ物やドリンク購入時など予約時間内であれば柔軟な入館ができます。
さらに、ブラックリストへの追加オプションがあります。これは顔認証との連携のもと、事前に何らかのトラブルを起こしたお客様の入退室を許可しないようにする仕組みです。無人店舗であるがゆえ、セキュリティ面でどうしても不安があるという経営者も多いと思います。そこに顔認証を導入することで、そもそも自分の顔を登録することに抵抗がある利用者をはじくことができ、リスク削減につながります。加えて、ブラックリストへの追加を行うことで同様の事案が再発することを防ぐことができます。すなわち、顔認証は無人店舗のセキュリティを強化するうえで、不可欠な存在であるとすら言えるものです。
ここまで、HOUSEIの提供する無人店舗ソリューションにおける顔認証の活用事例を紹介してきました。そこから分かることは、私たちの生活に根付いている生活関連サービス業においても、顔認証を活用すれば新しいビジネスモデルを構築することができるということです。手続きの簡易化やセキュリティ強化、そしてプライバシー確保において顔認証が果たす役割は、非常に大きく人件費の削減などの面から無人店舗運営を考えているオーナーには、追い風となる技術です。
一方で、まだ発展途上にあるのが顔認証とキャッシュレス決済との連携です。そもそも、財布を持つ手間をなくしたい、紛失したり盗難されたりするリスクを減らしたいという思いからキャッシュレス決済は発達してきました。一方、顔認証は手続きの簡略化とセキュリティ強化のために用いられる技術です。このように両者は、意図する目的からも親和性があります。
先ほどのサウナの事例に戻りますが、現在売店では部屋からわざわざQRコードを持って行って決済を行う手法をとっています。しかし、これでは手間がかかる上に不正利用などセキュリティ面の不安も存在します。顔認証と決済システムの連携が実現すれば、事前にクレジットカードなどの情報を登録し、その場ですぐ商品を購入することができます。
顔認証決済のアイデア自体は決して新しいものではなく、大手コンビニエンスストアではすでに社員向けに実証を開始しています。内容としては専用端末もしくはアプリを用いて事前に顔画像やクレジットカード情報を登録することで、セルフレジ支払い時にはカードや現金などが不要になるというものです。日本ではあくまで実証実験の段階ですが、海外では実際の店舗運営で顔認証決済が用いられています。例えば、中国は顔認証決済の利用が最も進んでいる国の一つとされていますが、中国国内の大手コンビニエンスでは約1,000店舗で導入されており、1億人以上のユーザーが利用登録をしています。
日本はそもそもキャッシュレス化自体が他先進国に比べて遅く、まだまだ導入の余地が多くあります。その要因の一つに、消費者情報漏洩などセキュリティ面での不安が挙げられると思います。しかし、これまでに述べてきたように顔認証を結び付ければむしろ安全性を強化することができます。また、機械が苦手でキャッシュレス決済に否定的である層のお客様にも簡単に使ってもらうことができるというメリットもあります。決済システムとの連携で顔認証の存在がメジャーなものとなり、それが幅広い世代での利用につながるという可能性も秘めているのです。
以上は店舗型での顔認証の活用事例および今後の展望でした。それでは、その他の分野で顔認証による無人化が可能なものはあるのでしょうか?例えば、近年レンタカーではなくカーシェアが普及してきていますが、無人であるが故にアルコールチェックが実施できず酒気帯び運転を見落とす恐れがあることが指摘されています。道路交通法施行規則改正に伴い、今年の12月1日からは「白ナンバー」の車を使う事業者に対してアルコールチェックが義務化されるため、レンタカー及びカーシェア業者も無視できる事柄ではありません。そういった課題にも対応できるのが、WelcomIDなのです。次回は顔認証とアルコールチェッカーを主なテーマに、店舗の形をとらない事業に関して顔認証をいかに活用していくか考えていきたいと思います。
顔認証コラム一覧
【Vol.1】顔認証技術がアフターコロナの時代にもたらすDX化
【Vol.2】無人店舗が人間の価値を高める!?
【Vol.3】顔認証決済実現に向けて
【Vol.4】顔認証付きアルコールチェッカーが運送業で「今」必要なワケ