システム導入で教育の可能性を広げる
管:この度は「TOP対談」にご協力いただき有難うございます。オンラインでの対談ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。では早速ですが、弊社のオンライン教育プラットフォーム「Möbius」を採用いただいてから半年が経ちましたが、教育現場での変化などはありましたか。
永島:よろしくお願いいたします。Möbiusに関してですが、生徒は特に順応していると感じますね。初めて使うシステムですが、ITリテラシーも高く、しっかりと活用できていると思います。一方で、教員は当初、慣れるまでに時間を要している印象を受けましたが、こちらも徐々に使いこなせるようになってきました。8月には開校後最初の前期末試験があり、全生徒への添削指導を実施するという重要業務がありましたが、それも期日までに対応が完了し、スムーズに終わらせることができました。
管:大きなトラブルなく移行されているというのは、永島さんのご指導方法が良いのでしょう。以前の紙ベースの教育方法から「Möbius」に切り替えるとなると、大きな反響や抵抗があったのではないかと推測します。変革時にはそういった声があるのは自然なことですが、実際に具体的な例としてはどのようなものがありましたか。
永島:そうですね。なんの滞りもなく移行できたかと言えばそうではありませんでした。例えば、日本の国語は縦書き形式がデフォルトですが、Möbiusでは縦書きを対応していませんよね。問題文は画像として取り込むので、縦書き形式で表示できますが、回答欄は横書き形式です。縦書きと横書きが混在している状態に、最初は戸惑う教員や生徒は多かったですね。そもそも紙ベースで進行すると想定して作成した設問だったので、Möbiusを活用するうえで再現性を保つのが難しい箇所が多々ありました。この反省を受け次年度のテストに関して、Möbiusで表現かつ回答しやすい設問づくりに取り組んでいる最中です。何事も、新しい商品やサービスを導入するだけでなく、その後に発生する課題を1つ1つ乗り越えていくことも、進化させる上では重要と捉えています。
管:素晴らしいですね。システム導入のEdTech(教育×テクノロジー)初期段階を経てさらに汎用させ、可能性を広げていくフェーズにいらっしゃるイメージを持ちました。課題というのは、実際に一歩を踏み込んでから見つかることが大半です。そういった一つ一つの事象に対して、私たちも真摯にサポートしていこうと考えています。
採点工数を大幅削減、教育の本質向上に効果を実感
管:Möbius導入後、具体的にはどのような効果を感じられましたでしょうか。
永島:そうですね。特にレポートなどの採点に関する工数は大幅に減り、教育の本質である指導に時間を割けるようになりました。目安としては、既存の採点業務の8割は削減できる見込みです。最初は採点アシスト機能に懐疑的でしたが、活用していくにつれ、その便利さと正確さから、無くてはならないシステムとなりました。本校は立ち上げて初年度なので、通常の教育業務以外の作業などでも多忙を極めていたのですが、Möbiusの採点アシスト機能で大いに助けられた節がありました。また生徒はMöbius上で24時間いつでもレポートを提出できるようになり、提出時間から生活リズムなども見えてきました。生徒の体調管理や生活指導などの参考にもできるようになった一面もありました。
管:デジタル化の付加価値として、すべてが可視化されるという特徴があります。今まで見えてこなかった事象を発見し、新たな取り組みも実現できるなど、教育の可能性が広がっていきそうですね。
永島:はい。現在は教科書に沿った学習支援動画を毎月YouTubeにアップしているのですが、そういったオンライン活動も一元化したいと考えています。生徒一人ひとりのレベルに合わせた設問を出すことはもちろん、本人確認がシステムで実現できれば、試験も場所や時間問わず受けられるのではないか、など新しい教育の形に少しずつ近づいているように感じます。
「顔認証」が新しい教育を実現する1つの鍵に
管:日本の小学校でも出席確認を顔認証で実施している例もありますよね。成長段階の容姿変化にも対応できるような、精度の高いシステムです。登下校時の管理だけでなく、「リアルタイム認証」「バックグラウンド認証」と呼ばれるような、オンタイムでの顔認証を継続して行うシステムもあります。それらを活用すれば、例えばリモート試験でも、画面前に認識した人物が継続して居るかを把握することができます。場所も時間も開放されて、正確な試験を実施できるようになれば、教育の新しい可能性も広がりますよね。
永島:それは良いですね。当校はエリアごとに日程を設定して試験を行っているので、webで問題用紙の画像が共有されるなどのリスクも想定されます。そういった技術を駆使すれば、リモート試験等への活用に期待が広がります。
管:例えば、教科書はあくまでも文科省指定のものですが、その内容をベースに、生徒毎にカスタマイズした教材を通して、生徒たちの理解をこれまで以上に深めることもできます。あくまで選択肢の一つとして捉え、生徒一人ひとりが自分にあった教材で学べる教育がスタンダードになっていくのでしょう。これまでの教育ではなし得なかったことですよね。Möbiusでいろいろな業務軽減を実現いただき、新たな教育の形を創造されているのは非常に喜ばしいことです。一方で、考えられる改善点などはありますか。
永島:Möbiusは、もともと大学の研究室などでの活用を想定されていることもあり、生徒単位での履修科目設定機能などの大人数対応が少し乏しい印書を受けます。例えば当校では、約300名の生徒たち一人ひとりの履修科目を1科目ずつ登録しないといけませんし、毎月新しい生徒が入ってくるので、受講科目が個々で異なるケースが多いです。現在は、受講CSVをクラス毎に振り分け、科目別で受講している生徒たちを管理する方法ですが、生徒一人ひとりの履修科目データを一括で流し込めるようになればいいですね。
管:開発にも話をして、対応ができるように働きかけます。
教育業界でも不足するIT人材
管:これからの新しい時代の教育を確立していくためには、Möbiusをはじめとする様々なシステムに適応する必要を感じますね。とはいえ、世間一般的にはこれらを扱える「IT人材」が不足しているという現状もあります。御校のシステム担当者は、何人くらいいらっしゃいますか。
永島:法人本部および各事業部でそれぞれ2名程度でしょうか。現在は特にこの手の人材は確保が難しい状況ですが、私がシステム導入を進行しているMöbiusについても、業務の属人化は避けなければなりません。教員には教育に注力してもらうためにも、アウトソーシングは必須になってきますよね。実際に、コンテンツ制作などは外部に依頼することもありますし、AI-OCR(光学式文字認識)やRPA(定型業務の自動化)の導入なども行っています。
管:どの業界にも言えることかもしれませんが、事業の本当の目的のために、「何が最良か」を検討することは重要ですよね。内製化に固執していては、実現できることもできなくなってしまう場合もあります。そういったことであれば、システムだけでなく運用なども含めたサポート体制も用意できます。我々も本気で日本のDX推進をサポートしたいと思っています。同じ思いを持つ企業同士が手を取り合い、理想を実現させていく必要があるでしょう。
アウトソースを活用しながら、ICT教育を実現させる
永島:通信制の高校は、以前と比較すると確実に社会に認知されており、教育のインフラとして基盤も固まってきたように感じる一方で、仕組みは時代錯誤である場合が多く、実際の教育現場では作業に追われる現状があります。通信制高校の本来の役割は、距離が離れていても、教員と生徒がコミュニケーションを取れる環境で、人間的な成長を促すことです。加えて、通信制は授業履修やレポート提出など生徒自らの選択を積み重ねる教育形態なので、自主性の育成も大いに期待されます。その実現のために、Möbiusに限らず支援システムの導入はもちろん、人材などのアウトソースの活用は必要不可欠ですよね。教員には、「テストが何点だった」という表面的な事象ではなく、「間違えた理由は何だろう」と生徒一人ひとりに向き合ってもらいたい。教員たちには、作業に追われる教育を止め、改めて教員になった理由や、教員としての存在意義を見出していただきたいです。そういった教員がさらに増えていけば、通信制学校をはじめとする教育業界全体のDXも促進し、活性化していくと信じています。
管:仰る通りMöbiusはあくまでも、作業効率化を担うツールの1つです。本質的な教育を実現するために、これからも連携を強化し、新しい時代の教育現場の創造をサポートしていければと考えています。
有難うございました。
通信制高校のヒューマンキャンパス高校・ヒューマンキャンパスのぞみ高校 (hchs.ed.jp)
Möbius(メビウス)
強力な数理計算エンジンを備え、カリキュラム作成や練習問題作成、オンラインテストの実施、自動採点、成績管理など様々な機能を備えた総合オンライン教育プラットフォーム。すでに世界400以上の学校で導入されており、学校によっては単位取得率が20%から80%に大きく上昇するなど、高い学習効果をあげています。また、先生の採点・添削などの作業を大幅に縮減することで、学校の運営コスト削減にも役立てられています。 Möbius (housei-inc.com)