【 EPSホールディングス】
1991年CROのパイオニアとして創業以来、開発から育薬、販売、マーケティング、コンサルテーション等のソリューションに加え、ビッグデータ&AI、再生医療などへの取り組みで製薬、医療機器関連企業、病院・クリニック、アカデミアヘ新しい価値を提供するヘルスケア・ソリューション・プロバイダーです。2021年より創薬事業を開始し、アカデミア及び国内外のバイオベンチャー発シーズの臨床開発支援及び国内外でのマーケティング支援事業を展開しています。
世界から見る日本のIT業界
管:1970年代からのコンピュータ普及から、業界を問わず歴史的に大きい変革が起こり、そのスピードはさらに加速する一方です。それに伴い、世界各国でIT業界もめまぐるしく発展していますよね。一方で、日本のIT業界の動きが鈍いのではと懸念されている声も多いと聞きます。なぜそのような印象があるのでしょうか。
林:そうですね、例えばアメリカのIT業界を見てみると、日本と比較してIT人材数が4倍以上といわれていますので、単純に業界規模も大きいです。また、こちらが本質的な違いになってきますが、アメリカのSIの仕組みは、受託開発という業態よりも、企業に属しているケースが多いんです。例えば、アメリカでは、運用側とSE(システムエンジニア)が文字通り1つのチームとなり、ビジネスの成功という共通の目的を置いています。一方、日本のSIer(エスアイヤー)は、ほとんどが受託開発を請け負います。つまり、運用企業から注文された通りに、仕様書の要件を実現することが最終目的になっているのですね。
管:目の前の分業された開発業務を、筋道通りに進行し、自分が担当する箇所をとにかく完遂することが目的になっているSEが多いということですね。それでは「SEが新しい価値を創り出す」という概念は生まれませんね。
林:その通りです。アメリカでは、運用側とSEがチームでスクラムを組むイメージで、いわば皆がオーナーシップを持ちながらビジネスの成功の為に走ります。良いモノを作ろうと全員で考えを巡らすと、付加価値も生まれやすくなるので、IT業界全体も活性化しますよね。一方日本では、エンドユーザーと運用企業、そしてSI事業者がそれぞれ独立しているようなイメージなのですが、この構造は根本的に課題を抱えているのです。なぜなら、それぞれの視点があることで、目指すべきところがぶれてしまい、いつまでたっても誰も満足がいくものを作れなかったりするからです。ゴールの不一致から、それぞれの立場で不満が蓄積していき、開発現場は疲弊していく。この構造が日本では往々にしてあるのですね。
管:確かにそうですね。日本において「SEは大変だ」という一般的なイメージはそこから来ているのでしょうか。日本のIT人材がなかなか増えない原因も、この構造にあるのではないかと思っています。
林:構造はもちろんですし、冒頭でお話ししたSEの意識もありますよね。言われた通りにすればいい、というSI事業者やSEは日本に多いと思います。後々、そのせいで疲弊してしまうのですけれど。
「共創型」と「アジャイル」の開発が求められる
林:日本のSI企業の現状を脱却する解決策は1つです。「受託型」から、「共創型」という認識でプロジェクトに携わること。そしてこれは運用企業側から見ても、必要な転換です。
昨今の社会環境の複雑化で「VUCA(ブーカ)時代」といわれるように、将来の予測がより困難になってきています。そうすると、変化に合わせた高速な試行錯誤と改善が必要ですから、内製化は切っても切れない関係にあるでしょう。しかし、これまで開発にリソースを避けなかった企業にとって、内製化の実現は難易度が高く、逆に時間がかかってしまいます。
そこで、必要になってくるのが、先ほど述べた「共創型開発パートナー」です。そうすることで、運用企業とSI事業者が同じゴールを見据えることができ、より顧客の立場に則したシステムやサービスを創り出せるのです。加えて、VUCA時代においてもう1つの重要なキーワードが「アジャイル(スピード)」です。リアルタイムな現場のニーズ変化やフィードバックを経て、両社がワンチームで改善を繰り返していく。HOUSEIのSEはこの辺りが秀でていますよね。もちろん技術も十分にありますが、とにかく柔軟に、素早く対応している印象があります。
管:有難うございます。設計や開発から、メンテナンス、アップデートといった対応が可能なフルスタックエンジニアがいるので、柔軟な対応も実現できています。また、アジャイルに関しても、常に意識を持つようにしています。これまでの価値観や概念のままでは、時代に取り残されてしまいます。気が付いたなら、直ちに行動しなければ、対応が遅れることになり、チャンスを逃してしまいますよね。仮に間違ったとしても即座にやり直すことで、大きな痛手を回避できますし、スピードを追求すると物事をシンプルに捉えられ、本質的なところに目を向けられると考えています。これまでのIT業界の歴史を振り返ってみても、ますますその動きは求められているように感じますね。
林:はい。ビジネスにおける以前のITの役割は、オンライン処理のシステムだったり、受信型のウェブ開発だったりと、一方通行的なシステムが主流でした。開発手法は「ウォーターフォール」と呼ばれる、開発手順をひとつずつ確認しながら工程を進めていく手法でしたよね。しかし現在は、エンドユーザーと企業のつながりの強さを重要視するような、エンゲージメント型のWebなども見受けられるようになりました。エンドユーザーの満足度を最優先で考え、運用企業とともに素早く創り上げていく、「アジャイル」手法に目を向けた開発方法も必要とされているのです。
管:常により良い開発方法を見つけ出そうと、試行錯誤することも大切ですよね。プロセスやツールも大切ですが、個人と対話し、本当にエンドユーザーにとって価値のある、使えるソフトウェアを開発することが、運用企業のゴールでもあり、我々SI事業者のゴールでもあります。両社で良い関係性を築きながら、ビジネスの成功を目指し、互いに成長し合える。そんな共創型のITビジネスパートナーを目指して、我々もまい進していきたいと思います。
本日はお忙しい中有難うございました。